屋根に上がらない屋根屋さん

by 内村 政光

 

顧客の心を見失ってしまう

 

最近拙宅が古くなってきたためでしょうか、

雨漏りが出始めていました。

そこで屋根家さんにお願いし、その原因を突き止め、

修理してもらうことにしました。

 

ところが、

 

実際に屋根家さんに来てもらうと、状況説明を聞くだけで、屋根にも上がらず、

「状況から判断すると、北側なので、屋根が汗をかいている。天井から出ている

釘が長いので、それを切り落とせば、雨漏りはなくなる」と言われました。

 

最初は、「そうか、さすがプロは言うことが違うな、素人には考えもつかなかった」と

思っていました。しかし、屋根家なのに屋根に上がらないのは、おかしいと思い、

別の屋根家さんに見てもらうことにしました。

 

すると・・・

 

「確かに、屋根裏が汗をかくことはあるが、それだけではないと思います。

原因を突き止めるために屋根に上がります。」と言って、屋根に上がり、

いろいろ調べて原因と思われるところに手を尽くしてくれました。

 

その屋根家さんは、その後も強い雨脚の翌朝や、しとしとと雨が降った翌朝、

立ち寄ってくれ、いろいろ観て確認してくれました。

 

顧客の心がビジネスを動かしていく

 

顧客の心を掴んだのはどちらの屋根家でしょうか?

 

もちろん後者ですよね。

最初の屋根家は屋根にも上ろうとせず、口先だけでお金を取ろうと

していました。


自分はプロだからというプライドもあったためでしょうか、こちらの話を

じっくり聞くことはなく、「どこそこでやったのは自分だ」などと、

自慢話をしていました。

 

一方、後者は、こちらの話に耳を傾けてくれ、親身になって相談に乗って

くれました。


それに端を発し、ほかにも壁や畳などのリフォームをお願いすることに

つながったのです。

 

顧客第一という言葉は念仏のごとく、何度も唱えられます。

しかし、それが実際に実行に移されるのはごく僅かです。

 

「どう売ろうか?」 ではなく、

顧客が「何を望んでいるか?」ということにビジネスの答があります。