あなたの施設の空き部屋が埋まらないとしたらどうしますか?
もし、あなたが運良くこれを読む数少ない方であれば、
それが何であるかをお伝えします。
筆者が関わったあるグループホームのことです。
立ち上がりから3年ほど経った時のこと。
急にバタバタと看取りが続き、施設の空き部屋が5つ空きました。
この施設は、2ユニットなので18名の入居が可能なのですが、約1/3が空いてしまった。
しかし利用者は減っても、スタッフはおいそれと解雇はできない。
理由はあなたも知っているように、この業界は人材が不足しているからです。
そこでどのように利用者を増やすかという方法を考えてはみたものの
すぐに入居者が入ってくるということは起きません。
聞くと、「今までにこんなに一度に利用者が減ることはなかった。
そこで、地域の包括センターを周り、営業しようということになった。」とのこと。
これって本当にうまくいくのでしょうか?
地域の包括センターへ行って、「入居したい方がいたらよろしく、
今、部屋が空いています」とお願いしたら、
「待ってました。何名ですか? 何時から入れますか?」と
言われることは通常はありえません。
都内23区などの人口密集地なら、いざ知らず、23区外や地方では
こんな夢物語りのようなことはないのです。
「そうですか、心がけておきます」と言われるのがせいぜいなのです。
実際、営業しても、今入居者が欲しいのに、明日なのか、一周間後なのか、
一月先なのか、それとも半年後なのかわからないと困りはててしまうのです。
その間、看取り、入院、他の施設への転居などの理由で、次々に収入が減ってきます。
このままでは現スタッフを維持することさえままならなくなってくるのは
目に見えています。
なぜこんなことが起きるのでしょうか?
このようなことが起きる理由は幾つか考えられます。
その中でも特に重要だと思われる理由をここではお伝えします。
1. 事業計画が立てられていない。
2. 事業計画は立てられているが、形だけであり、実際は行き当たりばったりに
なっているのが実情である。
3. 事業計画を実行する戦略が立てられていない。
4. 上記1〜3いずれも当てはまっている。
しかし、ここでの本当の問題は、別のところにあるのです。
本当の問題
事業を始める際に銀行等へ行ってお金を借りるために
融資担当へ事業計画を見せます。
しかし、 融資担当は資金計画が立てられていて、返済計画やその能力が
あるかどうかには目を皿のようにして、隅から隅までみるのですが、
事業目的に関しては、「あっ そうですか」ぐらいの感覚でしかみません。
その結果、本当の問題を見逃しているのです。
その本当の問題とは、
事業の設計図ができていないことです。
なぜ、事業の設計図がないことが問題なのでしょうか?
ここでは、家を建てることを例にして考えてみます。
あなたが家を建てる際にまず手始めに何をするでしょうか?
資金? 住宅展示場へ行く? 住宅会社を探す?
ちょっと待ってください。
上の一つひとつはどれも大切ですが、最も重要なのは、
家を建てる際の流れ、進め方、つまり「家づくりの全体像」を知ることです。
次に、家そのものにしても、家を建てる目的は何か?
その目的のためにどんな家に住みたいのか?
家族は4人いるので、部屋はいくつ必要か?
車庫のスペースは必要か? などと
目的から全体的なイメージを考えていく必要があります。
そしてそれに基づいた間取りを含む設計図が必要です。
もし、設計図なしに、家を建て始めたら、どうなるでしょうか?
このキッチンは素敵なので、これにしようとか、照明はこれだよね。と進めると、
後で、「本当は、こんなはずじゃなかったのに・・・」となってしまう
ことが起きてしまいます。
事業も同じです。
事業計画を立てて、動かしてみたものの、一向に進まない。
近くのグループホームをみたら、認知症カフェをやっている。
「うちもやらなくちゃ!」とやるが、人が集まらない。
利用者、スタッフのストレスだけが溜まる。
その結果、
「どうして良いかわからない。打つ手がない。」となるわけです。
つまり、熱意に任せて事業を始めても、事業の設計図がないと、
途中で頓挫して、終いにはホームを閉めざるを得なくなってくるのです。
従って、まずやるべきことは、事業計画ではなく、
事業の設計図を描くことなのです。
現在グループホームを運営されているあなた、3年先の事業の状況が
明確に見えていないならば、これを読んだ機会に
今すぐ設計図を描いてください。
漫然としか描いていない場合は、明確にしてください。
そこから、空き部屋がなくなるばかりか、
入居を求めて順番待ちしている将来の利用者が列を作っている状況となります。